ねこと用水路
この前、夜中に彼女と本屋に行った。
彼女が欲しい雑誌があるから買って、と言ったからだ。
その日僕は仕事が休みだったんだけど、
いろいろあって二人で会っている途中彼女を待たせてヘルプに行った。
そのお詫びに、ってことだった。
駐車場について、車からさあ降りよう、って時に彼女が言った。
「ねえ、猫をつぶすって話聞いたことある?」
「うちのおじいちゃん、野良猫が嫌いなの。
どのくらい嫌いかって言うと、前にうちの畑のすみにある
じいちゃんお手製の小屋の中に猫が子供を産んで巣を作ってたのね。
じいちゃんそれを見つけて、そこに居た子猫をまとめてビニール袋に詰めて
用水路に流したの。それぐらい嫌いだったの。
それで最近、じいちゃんまた小屋に猫が巣を作ってるとこ見つけたらしいのね。
子猫は生まれたばっかだったって。
じいちゃんに見つかったので母猫は、じいちゃんの目の前で子猫を口にくわえて
一匹一匹運び出してったんだって。
じいちゃんは言ってた。
「一匹母猫に似て綺麗な奴がいたどお。あれなら飼ってやってもいいな。」
なんか私はじいちゃんの変化に感動しちゃったよ。
それまでうちでは猫飼ったことなかったんだけど、
これなら猫、かえるかな、って期待した。
これが3ヶ月くらいの前の話なんだけど、
2,3日前にまたその猫のことをじいちゃんとばあちゃんが話してたの。
「この前の猫が大きくなって、また小屋にいたよ」
「また畑荒らされたらかなわんど」
「あんときやっぱりつぶしておけばよかったなぁ」
「用水路に流すにはちょっとでかい」
正直、とても残念な気持ちになったよ。猫飼えないことにではなくね。」
聞き終わって僕は、ふと疑問におもったことを聞いた。
「君のうちでは、なんでも用水路に流すの?」
「そういえば、昔殺した蛇も流してたかな。おばあちゃんの家でねずみ取りに捕まってたねずみも…。」
「ふぅん…。」
そのあと、車を降りて二人で本屋に行った。
彼女は最近流行っているらしい、付録のついた女の子向けのファッション誌をひとしきり見た後新しく創刊された漫画雑誌を選んだ。彼女の好きな漫画家が新連載を始めるらしい。
帰りがけに彼女が言った。
「私、猫が好きなの。一緒に住んだら猫を飼ってもいい?」
僕はもちろんいいよと応えた。
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